熱中症から身を守るために

これから本格的に迎える暑い季節、スポーツを楽しむ皆さまにとって特に注意していただきたいのが「熱中症」です。熱中症は、単なる体調不良ではなく、重症化すれば命に関わることもある医療緊急事態です。

 

今回は、熱中症の症状・予防策・応急処置について、できるだけわかりやすくお伝えいたします。正しい知識を身につけて、安心・安全なスポーツライフを送りましょう。

熱中症とは? ~分類と症状~

熱中症とは、「高温多湿の環境によって体温調節機能が破綻し、体内のバランスが崩れることで起こる健康障害の総称」です。2024年に日本救急医学会が発表した診療ガイドラインでは、重症度に応じて以下の4段階に分類されています。

※熱中症診療ガイドライン2024より

I度(軽症)

  • めまい、立ちくらみ、生あくび
  • 筋肉のけいれん(いわゆるこむら返り)

→ 意識障害はなく、水分補給や涼しい場所での休息で回復が期待できます。

II度(中等症)

  • 頭痛、吐き気、倦怠感、集中力の低下など

→ 医療機関での受診が望ましい段階です。

III度(重症)

  • 意識障害、けいれん、肝臓や腎臓の機能障害、血液凝固異常など

→ 速やかな救急搬送と医療処置が必要です。

IV度(最重症)

  • 深部体温40℃以上、意識障害を伴う状態

→ 迅速な冷却処置と集中治療が生命を左右します。

 

https://www.asahi.com/articles/AST5Z250WT5ZUTFL00YM.htmlより画像引用

 

熱中症になりやすい人とは?

 

熱中症は誰にでも起こり得ますが、特に注意が必要なのは以下のような方々です。

  • 子どもや高齢者(体温調節機能が未発達・低下している)
  • 肥満の方、日頃から運動不足の方
  • 暑さに慣れていない方(暑熱順化ができていない)
  • 屋外で長時間活動する方(スポーツ・労働・レジャーなど)
  • 基礎疾患(心疾患、糖尿病など)がある方、特定の薬剤を使用している方

熱中症予防のポイント

 

  1. 十分な水分と電解質の補給
  • 運動前にコップ1~2杯(250~500ml)の水を飲みましょう。
  • 運動中は30分に1回を目安に、こまめな水分補給を行いましょう。
  • 長時間の運動では、塩分を含むスポーツドリンクや経口補水液の摂取が効果的です。
  • 市販のスポーツドリンクを薄める場合は、電解質濃度が低下するため、ひとつまみの塩を加えるなど工夫しましょう。

 

  1. 暑熱順化(暑さに体を慣らす)
  • 暑さに慣れていない時期は特に熱中症のリスクが高まります。夏休み前の期末試験後、すぐにフルで運動を始めて熱中症になる、というのはよくあります。
  • 本格的な活動を始める5〜14日前から、1日30〜60分程度の運動を継続しましょう。
  • 3日以上トレーニングを空けないようにすることで、順化効果を維持できます。
  • また、服の色にも注目しましょう。明るい色の方が熱をはじいてくれます。

※ウェザーニュースウェブサイトより

 

  1. 環境条件のチェック(WBGTの活用)
  • WBGT(湿球黒球温度)は、熱中症の危険度を示す指標です。
  • WBGTが28℃を超えるとリスクが増加し、33℃以上で「熱中症警戒アラート」、35℃以上で「特別警戒アラート」が発令されます。
  • 環境省や気象アプリなどで、活動日のWBGTを確認しましょう。https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php
  • 屋内でも熱中症になる可能性があるので、しっかりエアコンを使いましょう!

熱中症になってしまった時の応急処置

 

  1. 涼しい場所へ避難
  • 日陰や冷房の効いた室内に移動させましょう。
  • 炎天下の練習時はタープなどの日陰があると良いです。
  1. 衣服を緩めて体を冷やす
  • 首・わきの下・脚の付け根などを重点的に冷やします。
  • 水をかけて風を送る「水冷+送風」も効果的です。
  • もっとも有効なのはアイスバス(氷風呂)です。小さいプールで構いませんので日陰に準備しておくと良いです。溺れないように誰かが必ずそばにいるようにしましょう。

 

  1. 意識がある場合は水分補給
  • 経口補水液やスポーツドリンクを少しずつ飲ませましょう。

 

  1. 意識障害・けいれんがある場合は即救急車を!
  • この段階では口からの水分摂取は誤嚥の可能性があるため禁物です。
  • 救急車を要請し、搬送されるまでの間も冷却処置を続けましょう。
  • 解熱剤(アセトアミノフェンやNSAIDs)は臓器障害の可能性や病状の判断の妨げになるため使用せず、冷却によって体温を下げます。

子どもや高齢者への配慮も忘れずに

  • 子どもは喉の渇きを訴える前に脱水状態になることがあるため、大人からの声かけと定時の水分補給が必要です。
  • 高齢者は暑さに対する感覚が鈍く、重症化するまで自覚しにくいため、周囲の見守りが重要です。
  • スポーツ指導者や保護者の皆さまは、日頃から「水分補給・休憩・気温確認」の習慣を定着させましょう。

熱中症予防は“備え”と“判断力”

 

熱中症は、正しい知識と備え、そして早い段階での判断によって、予防可能です。

スポーツの楽しさを守るために、自分自身や仲間の体調をしっかり観察し、異変があればすぐに行動に移すことが大切です。

 

 

リオクリニックは2024年川崎市多摩区生田に開院いたしました整形外科クリニックです。

スポーツ医学が得意な医師が多く在籍しておりますが、ご高齢者の通所リハビリテーションや骨粗鬆症の検査など、一般整形外科も勿論ご対応いたしております。

JR南武線「中野島駅」より徒歩15分
小田急線「生田駅」より徒歩15分
川崎市路線バス 登14「土渕駅」より徒歩2分(登戸駅等より)

リオクリニック
神奈川県川崎市多摩区生田1丁目1番1号
044-874-4022

参考資料

  • 日本救急医学会 熱中症診療ガイドライン2024
  • 環境省「熱中症予防情報サイト」
  • NATA(National Athletic Trainers’ Association)position statement
  • 朝日新聞社 https://www.asahi.com/articles/AST5Z250WT5ZUTFL00YM.html

 

 

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